問いの集約
三味線の学び方は進化している──オンラインと対面の違い/上達に欠かせないこと/動画独学の落とし穴
三味線の稽古は、従来の対面に加えて、先生と双方向に学べるオンライン稽古も一般化しつつあります。 一方で、YouTube等の動画だけで独学しようとして挫折したり、痛みや自己流の癖が固定化する例も増えています。 本回では、対面・オンライン・動画の「上達しやすさ」を整理し、上達に欠かせない要素を 「他者(師匠・仲間・楽器・作品)との対話とフィードバック」として明確化します。 さらに、オンラインが強い領域/対面でしか伝わりにくい領域(口伝・微細な音・力加減・深い次元)を比較し、 自分に合った学び方の組み立て方と、今後の可能性(VR等)まで展望します。
この回で共有した問い
- ・三味線は「対面」「オンライン」「動画」のどれが最も上達しやすいのか。
- ・動画独学が挫折しやすい本当の理由は何か(技術不足ではなく構造の問題ではないか)。
- ・上達に欠かせないものは何か──練習量よりも重要な要素は存在するのか。
- ・オンライン稽古の利点(場所制約の克服/自己観察)と限界(微細な音・口伝)はどこにあるのか。
- ・「楽譜通りそこそこ弾ける」段階を越えるために必要な条件は何か。
- ・自分の可能性を広げる鍵としての「他者」とは具体的に何を指すのか。
- ・将来、VR等の技術が学び方をどう変え得るのか。
内容概要
三味線の学び方は、対面稽古に加えてオンライン稽古が拡大し、さらに動画による独学も試みられる時代になった。 多くの奏者の見解として、上達しやすい順は概ね「対面」「対面+オンライン併用」「オンライン」「動画独学」であり、 動画のみは逆効果や怪我・挫折につながる場合がある。上達に欠かせない要素は「他者」であり、師匠や先生からの フィードバックがないと、自己解釈が二重に入りズレが固定化しやすい。オンラインは場所制約を超え、良い先生に アクセスできること、録音・録画によって自分の状態を見聞きする機会が増えることが大きな利点で、対面のみの人が 併用すると上達が加速する場合がある。一方、口伝的な吸収、微細な音、力加減、触れて分かる情報、芸術・伝統芸能の 深い次元は対面が優位である。オンラインほど講師の観察力と言語化が要求され、短い回数でも適切な指摘があれば 独学や猛練習より効果的になり得る。最後に、VR等の技術進展により、学び方がさらに更新される可能性にも触れる。
まとめ
上達とは、情報を集めることではなく、自己の輪(環世界)を破ることでもある。 動画は便利だが、自己解釈だけで進む限り、ずれを自力で検出できない。 対面や良質なオンラインがもたらすのは、「他者から観られ、応答される」関係によって自己像が更新される体験である。 技術が進歩しても、芸事の核心は人と場に宿る。自分の目的に合う学び方を設計し、適切な他者に触れ続けることが、 三味線を長く深く進める最短路になる。
内容の記録
1.どの学び方が一番上達する?(対面/オンライン/動画)
・稽古の選択肢:対面稽古/先生と双方向のオンライン稽古/動画を見ての独学
・上達しやすさは概ね「対面」→「対面+オンライン併用」→「オンライン」→「動画独学」
・動画のみはズレの固定化・怪我・挫折につながる場合がある
2.上達に欠かせないこと(キーワード:他者/フィードバック)
・上達に必要なのは「他者がいること」
・動画独学の問題① 自分で解釈する(提供者の意図を外れやすい)
・動画独学の問題② 自己解釈が二重に入り、ズレた訓練を続けても誰も指摘しない
・例:バチの角度・小指の巻き込み・握り込みによる痛み/音色の崩れ(ぺちゃっと落ちる)
・動画で学べるのは基本的に上級者(質の判別や再現ができる人)
3.動画が有効なケース
・質の良い動画を判別できる基礎教養があることが前提
・知識の獲得/曲や奏者の存在を知る/上級者の参考資料/先生の人となりを知り相性を見極める
4.対面とオンラインの違い(どちらが上達する?)
・「回数」より「指導の質」:合わない対面を重ねるより、良い先生のオンライン1回が有効な場合もある
・オンラインの利点:場所制約がない/休みづらい/自分の音と映像を見聞きする機会が増える
・オンラインでもできること:テクニック、基礎知識、質疑応答、曲のチェックなど
5.対面稽古が有利な点(口伝/微細な音/深い次元)
・口伝(見て聞いて吸収する)/かすかな音/可聴領域外の情報/触れて分かる力加減
・芸術・伝統芸能の根本や、壁を越える「自分にしかできないこと」の伝承は対面が優位
6.オンラインほど先生の指導力が求められる
・映像だけで課題を見抜く観察力、言語化できる知識と経験が必要
・オンラインは先生のスキルを鍛える側面もある
7.オンラインで実現できる可能性(よくある悩み)
・基礎を学び直したい/痛みのない動作を身につけたい/ジャンルを増やしたい
・組織の束縛なく学びたい/本当にやりたかったことを実現したい
8.「そこそこ弾ける」状態を越えるには
・不足しがちなもの:深い基礎、深い知識
・自分の可能性を広げるのは「他者」
・猛特訓よりも、輪の外へ出るための一歩(人・楽器・作品との出会い)が重要
9.将来の可能性(VR等)
・VRが動作支援を担うことで、学び方がさらに更新される可能性
・テクノロジーの進展を注視し、適切に取り入れていく
初公開:2023-07-4 / 最終更新:2026-01-11