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(24)道を歩みだす時 (太棹紅木)


太棹三味線と手

「出会ってしまったので、後戻りできない」

 

この三味線を選んだ方の確信に満ちた言葉です。

 

 

いつも、この世界から少し隠れている。

 

それはご自身もなんとなく感じていたこと。

 

 

長いおつきあいの方です。

 

小物を買いに来てくれたついでに、珍しく三味線を試奏したいと。

 

目に止まったのは、その週に製作の目処が着いたばかりの、仕上げが終わっていないある三味線。

 

じっくりと丁寧に構え、背筋を伸ばし、深呼吸をして、一の糸の解放の音。

三味線と心と身体が共鳴する瞬間。

 

不意におとづれた出会い。

 

 

「あんな優しい音色を奏でる男性を初めてみた」。

 

ある演奏会で彼の演奏を聞き、聴衆の一人が涙を流したそうです。

 

世界から隠れていた彼が少し開いたのだと思います。

 

 

「単なる上手」の卒業、それは「心に響く演奏」。


彼はこれをきっかけに、自分の道を歩み出すでしょう。

 

この三味線の音色

 

 

 

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