HOME三味線の基礎知識>三味線の演奏ジャンル(種類、カテゴリー、分類、流派)


三味線の演奏ジャンル(種類、カテゴリー、分類、流派) 

 

三河万歳と三味線

(芸能の源流の一つ 三河万歳)

三味線には400年の歴史があります。

 

このため、様々な伝統ジャンルがあります。

大まかにどんなものが有るのかを知った上で、自分のジャンルを捉え直してください。


※ご注意:演奏ジャンルは諸説あります。特に特定流派により主張が異なります。ここでは学者の客観的な演奏ジャンルの知識をお伝えします。

目次


代表的な演奏ジャンルと音色


以下をご覧になれば現代の代表ジャンルと音色が把握できます↓

代表的な伝統ジャンル(江戸時代まで)


三味線の伝統劇な演奏ジャンル 江戸時代まで

江戸時代までに確立されたジャンルを伝統ジャンルと定義すると、

民族音楽(民衆に親しまれた音楽)では「民謡」、

芸術音楽が源流のものは「地歌」「長唄」「義太夫節」「常磐津節」「清元節」「荻江節」「一中節」「新内節」「河東節」「豊後節」「宮園節」があります。


これらを源流とするものに「端唄」「うた沢」があります。

その他では俗曲では「都々逸」があります。

明治以降の新ジャンル


三味線の演奏ジャンル 明治時代以降の新ジャンル

明治時代以降も伝統ジャンルを源流とした新ジャンルが生まれています。

 

新ジャンルにはそれぞれ源流があり、

民俗唄→「新民謡」、端唄など→「小唄」「三味線歌謡」、歌浄瑠璃→「東明節」→「大和楽」、歌舞伎→「演奏会長唄」、地歌箏曲→「新日本音楽」「新邦楽」があります。

 

戦後では文楽から「豊本節」、津軽民謡から「津軽三味線」が新ジャンルとして生まれています。

ジャンルの簡単な説明

 

現存するジャンルで、おおよそ古い順に各ジャンルを簡単に説明します。

もちろんそれぞれのジャンルは簡単な説明では語りきれない奥深さがあります。

この点はご了承ください。

「民謡」 

 郷土の生活と結びつき、民衆が創作者を意識せずに、自由に口伝えで演奏してきた伝統的な歌・音楽である。現在世に知れ渡っているのはおおよそ明治時代以降の「新民謡」である。

 

「地歌」 

 数種類の音楽ジャンルの総称。本来は三味線曲としてつくられているが、箏や尺八との合奏曲が多い。三味線組歌、長歌物、端歌物、浄瑠璃物などがある。

 

「義太夫」 

 三味線音楽の一種目名で、浄瑠璃の1つである。名称は創始者の処世竹本義太夫に因む。

 

「河東節」

 「江戸節」とも呼ばれる。師流の「半大夫節」「肥前節」を吸収。歌舞伎が主だがお座敷系も演奏。上品で短い曲が多い。

 

「長唄」

 歌舞伎のために作られた三味線伴奏による歌曲が源流。日本音楽の集大成と言われるほど多様な音楽。

 

「常磐津」

 浄瑠璃の種目名で、初世常磐津文字太夫が創始した。豊後節の系統に属し、清元節、富本節と共に豊後三流の1つとして教えられる。

 

「荻江節」

 長唄から分派した遊里向けの音曲。荻江露友が長唄をお座敷風に仕上げた。三味線は唄の引き立て役の位置付けで抑制的。

 

「清元節」

 三味線音楽の一種目名で、浄瑠璃の1つである。豊後節の系統に属し、常磐津節、富本節と共に豊後三流の1つとして教えられる。

 

「新内節」

 浄瑠璃の流派名で、18世紀に豊後節の一派の鶴賀新内が残した名称で、江戸浄瑠璃の一系統である 。
 俗曲としての側面もあり、2丁の高低音の三味線で鼻から抜けるような切ない音色で江戸情緒を表現。

 

「都々逸」

 都々逸坊扇歌が創始。三味線と共に歌われる俗曲で七・七・七・五の音数律に従うのが基本。

 

「端唄」

 江戸時代、聴くだけだった三味線をうたって楽しむために発展。源流は劇場音楽、遊離音楽、組歌、はやり歌。 

 

「うた沢」

 端唄を源流とする。一中節を規範とした上品で重厚な格調高い歌い方。一時は端唄の主導的な立場を占めた。

 

「東明節」

 河東節復興に尽力の平岡熙が一中節や歌謡要素を加え新流創始。転調が多く変化に富み技巧的な曲が多い。

 

「小唄」

 端唄をコンパクトにしたことが源流。四畳半趣味の爪弾き伴奏の粋な唄、気軽に誰でもうたえる唄がコンセプト。

 

「大和楽」

 大倉喜七郎が三味線音楽の新生面を開発のため創始。邦楽ながら洋楽的発声法。洋楽器をはじめ箏・十七弦・鳴り物の合奏まである。

 

「豊本節」

 文楽の野沢松之輔が義太夫節を母体に創始。語るのではなく柔らかく歌うようにする。声と三味線のパートが一対になるのが原則。

 

「津軽三味線」

 元々は民謡の一種であったが、太い糸を使った力強い低音と駒を改良して高音が出るようにして、撥を小さくしたことで、テンポの早い奏法ができることが特徴。

1960年以降東京に進出し、昭和以降の新ジャンルを確立。


参考:「三味線の歴史

各ジャンルの演奏を知る方法

 

もっとも良いのは、各ジャンルの創始者の生演奏を聞くことです。

しかし、全てのジャンルの創始者はすでに亡くなっています。

 

録音が残っているのは1900年頃からですので、一部は記録として残っている可能性があります。

 

なるべく古い音源の方が、本来のジャンルの演奏に近いと考えられます。

 

現在でもCDやYoutube で検索すれば、

各ジャンルの音源は試聴することはできます。

 

しかし、おおよそが西洋化し、現代アレンジした三味線と演奏が多いことを前提にしてください。


参考文献

・図解 日本音楽史 東京堂出版 田中

三味線の教本

三味線の音色の探求

三味線の基礎へ戻る>