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三味線の皮について 


三味線の皮

三味線の皮は音色にとって大切な部位です。

主に弦の音色を増幅する役割があります。

目次


 

動画 三味線の皮 通説と実態

本ページの内容を動画にまとめております。

 

皮の種類と音色

三味線の犬、猫、合成皮 三味線の皮と音色

現在、利用されている皮は99%以上が天然皮です。

主流は犬皮です。一部に猫皮(四ツ)、合成皮(リプル等)が利用されています。


伝統的な音色を奏でるのは四ツ、犬皮です。


皮の厚み、硬さによって音色は異なります。

【皮と音色の簡単な説明】
・音の大小 
 皮の張力  :皮を強く引っぱるほど音が振動する速度が速くなり、一瞬大きい音がでる。

・音の高低
 皮の厚み  :皮が薄いほど高い音が出る。
 皮の張力  :皮を引っぱるほど高い音が出る。

・余韻 → 皮の素材としての硬さ
 硬い皮ほど残響・余韻が短い
 柔らかい皮ほど残響・余韻が長い

数十年前から合成皮(リプル、〇〇合成皮など)が学校の教材用に利用されています。
当店の合成皮の見解「こちら」。


その他:カンガルー皮(現時点では猫と犬の中間的音色)
現時点では従来の天然皮の供給が安定していますので、価格も高いため使用する理由が見当たりません


皮の種類と音色の比較(表の皮)


 録音音源なので違いをお伝えするのには限界がありますのでご了承いただいた上でご利用ください。

@ 皮の種類と張り方による音色の違い


A 合成皮と犬皮の違い


B 犬皮と猫皮の違い


C 皮が緩むとどんな音色になるのか 




D 裏の皮がないとどんな音色になるのか


皮の厚みと音色


皮の厚さと見解をまとめましたので参考にしてください。


皮の目


一部の三味線専門の職人しか知らないことですが、皮には目(筋のようなもの)があります。
経験上、コマに対して目が直角になる時、皮が振動しやすいため、余韻がきれいな音色になります。(通常価格が高い皮)

裏の皮


 三味線の胴には両面皮が張ってあります。

 裏の皮は原則、音色への大きな影響はありません。

 このため、破れにくい張り方をするのが経済的です。

裏の皮と音色


 録音音源なので違いをお伝えするのには限界がありますのでご了承いただいた上でご利用ください。


@ 裏の皮の張り具合と音色の違い
→裏の皮の厚みや張り方を変えても大差なし


A 裏の皮がないとどんな音色になるのか
→裏の皮が無いと、音が後ろに抜ける。このため音量が小さくなる。また、共鳴が減るため、余韻が短く、単調な音色になる。


「かんばり」に対する見解


↓動画に出てくる(3)(4)の音色が「かんばり」の音色です。



皮を破れる寸前まで強く張る非伝統的な工法があります。それを「かんばり(乾張り)」といいます。


30年ほど前、競技津軽三味線の若者の一部が賞をとるために始めたことですが、一部が長唄、小唄、端唄、民謡、地唄などの伝統ジャンルに広がりました。


広がった理由は奏者が選択したわけではありません。一部の業者さんが頼まれもせずに、その工法を採用したからです。


しっかりとした説明を受けずに三味線を選んだ方の多くの方が、知らず知らずのうちに「かんばり」の三味線を利用しています。

なぜ 一部の三味線に「かんばり」 が必要だったのか

三味線とマイク
(マイクで集音してデジタル加工しスピーカーで増幅した音が前提の競技会や舞台演奏。この場合、三味線には"わかりやすい"、"短調な音"が求められる)

30〜40年ほど前に流行った津軽三味線の競技が理由です。


マイクの集音を前提とした場合、音の正確さや演奏の速さを競うためには「わかりやすい・短調な音」を出す必要がありました。


端的に言えば三味線を「琴」や「西洋楽器」の音に近づける(エレキギターっぽいという人もいます)。


それは機械的にひたすら皮をカチカチに強く張る工法が必要なため、三味線の根幹である「複雑さ」「雑味」「余韻」「心地よさ」「自然性」・・・が犠牲になります。


それを知っていて「競技用」に使うのであれば問題ありません。「競技」や一部の「舞台演奏」には必要だったのでしょう。


古来の三味線に「かんばり」は無い

三味線のあずまサワリに触れる手
(古来の三味線にかんばりは無い)

当店には昭和初期、大正時代、明治時代、江戸時代の三味線が多数あります。


古来の三味線には「かんばり」はありません。そもそも胴の構造上「かんばり」が不可能です。


伝統的な三味線が「かんばり」を採用しなかったのには奥の深い理由があるのです。

「かんばり」は皮が破れやすい


では、なぜ一部の業者さんは競技以外の三味線にも「かんばり」を採用したのでしょうか。


皮を破れる寸前まで張ることによる業者側のメリットがあるためです。


ここまでをお読みの方はお気づきでしょう。


こうして、一部の三味線に知らず知らずの内に浸透していきました。

試奏して「かんばり」を選ぶ人は いない

三味線の皮

当店は試奏ができる三味線専門店です。


長年奏者の方に多数の三味線を試奏いただいていますが、
無作為に試奏してもらっても、「かんばり」を選んだ方は過去一人もいません。


更にご興味がある方は以下をご覧ください。

参考:三味線?あのうるさい楽器ね

まとめ (かんばり(乾張り)に関して)

かんばりのメリット


・「わかりやすい・短調な音」であるため、音の正確さや演奏の速さを競うためには向いている。


・「マイクで集音してデジタル加工し、スピーカーで増幅した音」が前提の場面には向いている(一部の舞台)。


かんばりのデメリット


・皮が破れやすい。


・伝統芸能としての三味線には不向き。


・音色上のデメリットがある「詳細」。


以上を理解した上で選択いただければいいと思います。



天然皮がなくなると「あおる人」がいますが


犬皮は2013−15年頃に東南アジア産が枯渇し、「犬皮がなくなる」と業界が慌てましたが、
2016年以降は産地を変え従来の天然皮の供給が安定しました。

皮の質はまだ過去の皮のほうが良いのですが、徐々に新しい産地の皮の質も改善してきました。

しばらくの間は、さほど心配する必要はなさそうです。


この時「合成皮」「カンガルー皮」が選択肢として浮上してきました。


しかし、従来の天然皮の供給が戻ったこともあり、現時点ではこの両者が浸透する理由が見当たりません。


合成皮・リプルに対する見解 2021年版


三味線の皮に化学繊維を利用したものを合成皮(リプル,〇〇合成皮)といいます。


以下動画の(1),(2)が合成皮の音色です。参考にしてください。


合成皮・リプルに対する奏者の評価


三味線奏者の99%以上が天然皮の三味線です。


合成皮三味線が販売されて40年以上が経過しますが、この事実が奏者の合成皮三味線に対する評価を示しています。

弾き比べをして合成皮・リプルを選ぶ人は一人もいない

三味線在庫

三萃園ではどんな三味線なのか説明せずに、無作為に試奏いただくことがあります。

奏者の方に率直な意見をいただきながら、三味線製作に反映させる大切な時間です。

その長年の調査の結果「音色」や「演奏のしやすさ」の観点から合成皮三味線を選択した人は一人もいません。

合成皮のメリット・デメリット

化学繊維(合成皮・リプル)を利用する取り組み自体は否定すべきことではなく、選択肢の一つだと考えています。

・合成皮のメリット
「雨の日の外で使用する」「踊りで使用する」「音色の良し悪しに全く興味がない人」「長く・深く学ぶつもりがない人」「マイクで集音し、デジタル加工をすることが前提な人」などには選択肢かもしれません。
 
・合成皮のデメリット
「音色」:音色に関しては、昔より少しましになってきた程度です。現実的には、良い音色にはまだまだ天然皮が必要です。

例えば「耳が育たないこと(耳が悪くなる)」こと、「手首を痛める人がいる」ことや「挫折する人が多い」こと、
「メンテナンスフリーと宣伝されているが、実際はそうではない」「購入者の大半が間も無く伝統的な天然工法の三味線を購入し直す」ことなどは表面化することが少ないでしょう。


無理に合成皮を販売しなくてもよい当店としては、総合的かつ長期的に考えて、奏者の方に利点が多い伝統的な天然皮を推奨する場合がほとんどです。
(合成皮にメリットある方、例えば、外の踊りで使用する方には合成皮を推奨することがあります)

それは合成皮・リプルに限りません。

中長期的な視点に立つ場合、伝統的な工法には奥深い合理性が備わっていることがわかるはずです。
それは奏法も同じです。


三味線奏者の99%以上が天然皮の三味線を利用している。それが現時点の奏者の評価です。



伝統工法と機械大量生産


伝統工法  :「天然素材」「手作り」「個性を活かす」「一人一人に合ったモノ」


機械大量生産:「人工素材」「機械製」「均質(みんな同じ)」「効率重視」

→高度経済成長以降、三味線を機械大量生産するという発想でモノが作られた。そして三味線人口はどんどん減少していきました。


参考:音色の美意識〜余韻に関して〜


 本ページでは音色を説明する言葉「余韻」が何度も出てきました。

美意識」「音色の探求」に簡単にまとめてあるので参考にしてください。

ご興味を持っていただけた方に

本ページでご紹介したことは上達のほんの一部にすぎません。

三味線は400年の歴史が有り、奥が深すぎるため、詳細をお伝えするのは簡単ではありません。

さらに興味がある方は以下をご覧ください。

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