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三味線の棹(さお) 


三味線の木目

 三味線の棹は"音色"や"演奏しやすさ"にとって大切な部位です。

 正しい情報を得て自分に合った三味線を選択してください。

目次


通説と実態(動画)

本ページの内容を動画にまとめました↓

00:00 三味線の棹(さお,竿) 通説と実態
00:10 「通説」の目次
00:19 (1)棹の価値 @耐久性 A外観 B音色
01:29 (2)棹の種類 細棹、中棹、太棹 正寸、短棹 花梨、紫檀、紅木、金細、トチ 三つ折、延べ棹
03:08 (3)棹の価格 材料費が多い方が高い 希少な材料は高い
  03:48 「実態」について
04:00 「実態」を調査してきた背景
04:28 「実態」の目次
04:36 外観と棹の種類:実態は三味線材は多種多様 木材ひとつひとつ様々な個性がある
05:42 耐久性と音色と価格 基本的に「硬さ」は大切 実態は性能と価格が一致していない 偽物が普及している 本当の価値の判断がプロの役割
09:07 耐久性のまとめ 実態は棹の硬さは大切だが、かんべりは奏法との両立が大切
09:48 価格のまとめ 実態は棹の質に対して価格がバラバラ プロしか見極められない
10:19 音色のまとめ 棹の硬さは一つの指標ではあるが、音色は単に棹が硬い(重い)だけではあまり意味がない
11:39 自分にあったモノ 多くの方が自分にあった三味線に出会えない 試奏をさせてもらえない特殊な弦楽器だった 1mm単位で合う合わないがある 棹を選ぶポイント 体験(試奏)が必要

 

棹の種類

三味線の種類 花梨、紫檀、紅木 紅木の「金細」縞模様「土地がある」 三味線の種類 花梨、白紅木、2枚三味線 三味線の木材の密度に対する価格のグラフ

三味線の材質は大別すると「花梨(かりん)」「紫檀(したん)」「紅木(こうき)」があります。

同じ種類の材質でも、木の状態や木の箇所が異なるので、三味線一丁一丁には個性があります。

音色に影響を与える主要な因子は木材の密度です。


三味線は棹の密度が肝心です。

一般には価格も音色も
「花梨 < 紫檀 < 紅木」です。
また、木材一本一本に個性があります。
このため、紅木より密度が高い紫檀も存在します。

これは、三味線の専門家に鑑定してもらうしかありません。

また、紅木の中でも特に密度が高い部分を使っている
場合、木材に模様が浮き出る「トチ」があります。

この三味線は綾杉胴とセットで金細と呼ばれています。

ただし、必ずしも「金細」というだけで、良い棹というわけではありません。

善し悪しの判断は三味線の専門家に相談しましょう。


補足:木材の名称、解釈は地域や流派により差がありますのでご注意ください


棹と音色

棹(さお)の表面は徐々に消耗します。密度の低い木は消耗しやすい 棹の密度の低きは弦の振動を減衰させる可能性がある

 三味線の棹に求められることは
(1)長持ちすること(棹の表面が削れない:かんべりしない)
(2)弦の振動を減衰させない(弦の音を小さくしない)

このため、三味線の棹に求められることは
「木の密度が高い」∝「重量が重い」ことです。


【棹と音色】
・音の強弱(体積速度 = 振動する面積 × 振動する速度) 
 棹の密度  :棹の密度が高いほど、弦の音が減衰しにくいため、強い音がでる。

・音の高低(音の高さ(Hz) = 1/(弦の長さ×2)×√(張力/弦の密度)   音速 = √(弾性率/密度) )
 棹の密度  :棹の密度が高いほど、弦の音が減衰しにくい、また、
          弦を押さえた時に音を棹に伝えないため、狙いの音の高低が得やすい。 


本来あるべき姿


前記をまとめると「木の密度が高い棹を良い三味線と定義できる」と言えます。

このため以下のグラフのように材質(価格)と重量に相関関係があることが大切です。

当然ですが当店はこの指標を元に価格を決めています。

棹の重量のグラフ 花梨と紫檀と紅木の比較(本来あるべき姿)

棹の実態


一部の三味線専門の職人しか知らないことですが、近年製造された三味線は棹が軽くなっています(後述しますが良い資源が枯渇していることが原因です)。
資源が枯渇した上に、安売りをするために質の良くない棹で三味線を作ることが実態として広がっていますので、ご注意ください。

棹の重量と最近の棹と中古の棹 実態:棹の重量と最近の棹と中古の棹(花梨と紅木)

良い棹の材料は資源が減少しています


三味線は戦後の昭和期に2回ブームがありました。

三味線全般が人気だったブーム(主に長唄、小唄、端唄、地唄、民謡)と津軽三味線ブームです。

これらは高度経済成長期と重なったため、とにかく高級材から販売されていきました。

良質な紅木材という観点からは、資源はかなり減少しています(良質ではない資源はまだ多少残存しているようです)。

年代と三味線の材料 三味線ブームの影響

1960−80年代の三味線が音色が良いとの意見が多い

三味線を試奏するとどんな意見があるか

三萃園ではどんな三味線なのか説明せずに、無作為に試奏いただくことがあります。

奏者の方に率直な意見をいただきながら、三味線製作に反映させる大切な時間です。

その場合、多くの方が共通して音色が良いと答えるのが60−80年代の三味線、その次は90年代の三味線です。

2000年代以降に作製された三味線の音色が良いと答える方はほとんどいらっしゃいません。

その理由は前記のグラフを見ても明確でしょう。

本当に良い三味線材は最初の三味線ブームで経済的に豊かになり始めた1960−80年台にほとんど販売されきっているのです。
(数少ない良質な紅木の原木は一部の業者が投機目的で保有しているようです)

ブームで始めた人は挫折も多い


1960−90年代の三味線ブームで三味線を始めた人には挫折も多いです。

挫折した方は三味線が本当に好きではなく、
なんとなく周りの雰囲気に合わせて三味線を始めたからです。

挫折した方は良い三味線を購入したにもかかわらず(かなり高額でした)、
あまり棹を消耗させないで丁寧に保管されている場合があります。

これは、三味線の専門家しか見分けることができませんが、音色が良いとされる三味線は
この手の三味線が多いのは事実です。

このような三味線は音色が良く、大切な選択肢の一つです。


音色上は市販されている安売りの新品三味線はおすすめできない


2000年代以降、資源はほとんど枯渇しました。

良質な紅木の原木は少しだけあるようですが、一部業者が投機目的で保有しています。

また、2000年代以降はネット販売が流行り、とにかく、安売りをすることが流行しました。

現在では一部の業者が、ひと昔前に学校の教材用の合成皮三味線を名前を変えて(リプル、〇〇合成皮・・・)として安売り販売しています。
(詳細を知りたい方「皮の知識>」)

このような三味線は、
音色や木材の質の優先順位を下げて、質の良くない棹、胴の木材や質の悪い皮を利用して、
さらに三味線を外国人が作製している場合があります(三味線に思い入れのない人が作業者として作製している場合がある)。

このため、相場以下の違和感のある三味線は安易に購入しないことをお勧めします。

音色を優先させるなら2つが選択肢


 音色を優先させるなら2つが選択肢です。これは西洋楽器を含めたどんな楽器でも結論は同じです。

(1)オーダメイド
一つは国内に残っている数少ない良質な紅木の原木から、三味線をオーダメイドすることです。

これには時間と費用がかかります。

じっくりと時間をかけて、信頼できる三味線専門店から購入することをお勧めします。

(2)1960ー90年代の良質な中古三味線
もう一つは良質な中古三味線です。

現在では良質な中古品の価格はもともとの新品価格の1/3〜2/3程度が相場です。

価格は徐々に上がってきています。

資源が枯渇したため、いずれは、他の西洋楽器と同じように、質の良くない新品楽器より、ビンテージ品(成熟した楽器)が値段が上がってくる可能性もあります。

参考 : ご興味を持っていただけた方に

本ページでご紹介したことは上達のほんの一部にすぎません。

三味線は400年の歴史が有り、奥が深すぎるため、詳細をお伝えするのは簡単ではありません。

さらに興味がある方は以下をご覧ください。

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